前立腺肥大症は男性特有の疾患で、高齢になるほど発症する方が多くなる病気です。
前立腺肥大症の治療方法は主に「薬物療法・手術療法」があり、どういった内容かについてをこの記事で解説しますので、今後のご参考にして下さい。
前立腺肥大症の治療について「薬物療法・手術療法」
前立腺肥大症(BPH)の治療方法は、患者様の症状の重さや健康状態に応じて選択されます。治療は主に薬物療法、手術療法、ライフスタイルの改善から構成されます。以下にそれぞれの治療方法を詳しく解説します。
1. 薬物療法
前立腺肥大症の症状が軽度から中等度であれば、薬物療法が第一選択となることが多いです。ひとえに薬物療法といえど、使用される薬は様々な種類があり、効果もそれぞれ違います。患者様の個別の症状や前立腺のサイズに応じて処方されるので、どの薬を処方されるかは医師の判断によります。代表的な薬として以下の種類があります。
a. α1受容体遮断薬
- 概要: 尿道と前立腺の平滑筋を弛緩させ、尿の流れを改善します。速効性があり、比較的短期間で効果が期待できます。
- 効果: 尿道抵抗を減少させ、排尿困難や頻尿を軽減しますが、前立腺のサイズ自体を縮小する効果はありません。
- 副作用: 低血圧やめまい、疲労感が生じることがあります。
- 種類:エブランチル、タムスロシン、ナフトピジル、シロドシン等
b. 5α還元酵素阻害薬
- 概要: テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑え、前立腺の肥大を抑制します。前立腺のサイズを小さくする効果があります。
- 効果: 数ヶ月間の服用により、前立腺の縮小と症状の改善が期待できます。
- 副作用: 性機能障害(勃起不全、性欲減退)、精液量の減少など。
- 種類:デュタステリド(アボルブ)
c. ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬
- 概要: 勃起不全治療薬としても使われる薬で、前立腺肥大症(BPH)の症状改善にも有効です。前立腺や膀胱周辺の筋肉を弛緩させ、排尿を促進します。
- 効果: 排尿困難や頻尿を緩和し、性機能改善も期待できます。
- 副作用: 頭痛、消化不良、顔面紅潮などが報告されています。
- 種類:ザルティア、シアリス、アドシルカ
d. 抗コリン薬・β3作動薬
- 概要: 頻尿や急な尿意など、過活動膀胱の症状が見られる場合に使用されます。膀胱の過剰な収縮を抑えることで、トイレに行く回数を減らします。
- 効果: 夜間頻尿や尿意切迫感を改善します。
- 副作用: 口渇、便秘、視覚障害など。
- 薬の種類:ベオーバ、ベタニス、アノーロ
★薬物療法のまとめ★
前立腺肥大症の薬物治療には複数の有効な薬剤がありますが、どの薬が合うか、どれくらいの量を必要とするかは千差万別ですから、医師に症状の変化を相談しながら定期的な受診が必要です。また、服薬をしたからすぐに治癒して改善をするというものでもないため、医師との関係は長期に渡ります。
受診時に病状についてしっかり聞き取りを行ってくれて、あなたが信頼できると感じる医師に任せることでより良い改善を見込めるでしょう。
2. 手術療法
薬物療法で症状が改善しない場合や、前立腺が非常に大きい場合には、手術による前立腺肥大症の治療も選択肢に入ります。
a. 経尿道的前立腺切除術(TURP)
- 概要: 尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて前立腺の一部を切除する手術です。最も一般的な手術法で、症状の軽減効果が高いです。
- 効果: 尿の流れを劇的に改善し、排尿症状の大幅な緩和を期待できます。
- リスク: 出血、感染、逆行性射精(精液が膀胱に逆流する)、尿失禁など。
b. レーザー手術
- 概要: レーザーを用いて前立腺組織を蒸発または切除する方法です。レーザーの種類によって手法が異なりますが、一般に出血が少なく、回復が早いことが特徴です。代表的な手法としてHoLEP、PVP等があります。
- 効果: TURPと同等の効果が期待でき、比較すると出血リスクが低いのが利点です。
- リスク: 逆行性射精や一時的な尿失禁。
★手術療法のまとめ★
前立腺肥大症に対する手術療法は、原因である前立腺を小さくするため、薬物療法に比べて根治が期待できます。
しかし、デメリットとして尿失禁、射精障害、出血等のリスクが生じる可能性があるのも事実です。多くの場合、そういった症状は一時的なものですが、重症化する可能性もあります。個々の体の状態や病状にもよるため、主治医とよく相談することが大切です。
3. ライフスタイルの改善
軽度の前立腺肥大症の場合、生活習慣を見直すことにより前立腺肥大症の症状を改善出来る可能性があります。
- 運動: 規則的な運動は全体的な健康状態を改善し、排尿症状の緩和にも寄与します。
- 水分摂取のコントロール: 就寝前や外出前の大量の水分摂取を避け、尿意を調整します。
- 膀胱トレーニング: 膀胱の容量を増やすために、トイレに行く回数を徐々に減らす練習を行います。
- カフェインやアルコールの制限: これらの物質は膀胱を刺激し、頻尿を悪化させる可能性があります。
【まとめ】前立腺肥大症の治療には長い時間を要します
今回は前立腺肥大症の治療の概要について解説しました。
前立腺肥大症(BPH)の治療は長期にわたるため、定期的な受診が重要です。特に薬物療法の場合は薬の効果や副作用を評価し、必要に応じてお薬の種類を変えたり、手術が必要な状況になることもあります。
手術療法においても、手術後の前立腺の状態を確認するためには半年~1年に1回の定期受診をして経過を観察することが重要です。
前立腺肥大症は進行することが多いため、症状が軽度のうちから適切な治療を行うことが重要です。病院での相談や適切な治療法の選択が、日常生活の質を向上させるための鍵となります。
当院「ベテル泌尿器科」では、前立腺肥大症をはじめとする排尿トラブルの診療に40年間携わってきた三熊医師が、患者様の症状やお悩みに親身に寄り添い、最適な治療法をご提案いたします。
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