前立腺癌は、前立腺の細胞が異常に増殖して悪性腫瘍を形成する病気です。特に高齢男性に多く、初期には無症状で進行も比較的ゆっくりしているため、早期発見が難しい場合があります。
今回は、初期症状では気付きづらい前立腺がんの症状から、予防方法についてご説明します。
目次
前立腺がんの概要
前立腺癌は、男性の中高年に多くみられ、早期に発見すれば治療の選択肢も広がり、治癒が期待できます。
しかし、進行すると骨やリンパ節に転移しやすく、他の臓器への影響も及ぶため、定期的な検診が推奨されます。前立腺特異抗原(PSA)検査は早期発見に大変役立ちます。
前立腺がんの症状
初期の前立腺癌は自覚症状が少ないため、発見が遅れることが多いです。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
- 排尿困難や頻尿、夜間頻尿
- 尿が出にくい、または排尿の途中で止まる
- 血尿
- 骨の痛み(骨への転移がある場合)
前立腺がん治療の予後
前立腺癌の治療には、手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法などの選択肢があります。早期に発見し治療を行えば、予後は良好で、完治の可能性も高くなります。
ただし、進行癌や転移がある場合、治療が長期にわたることもあり、症状管理や生活の質を向上させるための支援が重要です。
前立腺癌は、特に進行している場合に、患者にさまざまな苦痛や困難をもたらすことがあります。具体的な苦しみは以下のようなものです。
1. 排尿に関する苦痛
- 排尿困難や痛み:前立腺が腫大して尿道を圧迫するため、尿が出にくくなったり、痛みを伴ったりします。
- 頻尿や夜間頻尿:頻繁にトイレに行く必要が出てきたり、夜間も何度も起きてトイレに行くことが必要になるため、生活の質が低下します。
2. 骨への転移による痛み
- 進行した前立腺癌では、骨に転移することが多く、腰や骨盤、太ももなどに強い痛みを感じます。これにより、日常の動作や睡眠が妨げられることもあります。
- 骨が弱くなると骨折しやすくなり、さらなる痛みや移動の制約が増すこともあります。
3. 精神的な負担
- 癌の進行や転移に対する不安、治療の副作用への恐怖などが精神的な負担を引き起こし、うつ症状や不安障害を感じることも少なくありません。
- また、日常生活の制限や家族への負担感なども精神的な苦痛を増やす要因になります。
4. 治療に伴う副作用
- ホルモン療法によるホットフラッシュ(のぼせ)や疲労感、筋力低下、性欲の低下など。
- 放射線療法では、皮膚炎、排尿時の痛み、血尿などが生じることがあります。
- 手術後には、排尿のコントロールが難しくなる(尿失禁)リスクや、勃起不全といった性的な機能に影響が出ることもあります。
5. 生活の質の低下
- 排尿や痛みの管理、定期的な通院などにより、仕事や趣味に影響が出たり、日常生活の制約が増えて生活の質が低下することがあります。
- 体力が低下しやすく、疲れやすいため、普段行えていた活動が困難になることもあります。
前立腺癌の苦しみは、肉体的・精神的・生活面で広がりますが、医療チームによる適切なケアや症状管理を行うことで、生活の質を維持しながら治療を続けることが可能です。
前立腺がんの予防法
前立腺癌の予防には、生活習慣の改善が重要です。直接的な予防策は確立されていませんが、以下の習慣がリスクを下げる助けになると考えられています。
1. 健康的な食生活
- 低脂肪で栄養バランスの良い食事:特に、飽和脂肪酸の少ない食品や植物性食品を中心に摂ると良いとされています。
- 野菜や果物を多く摂取:抗酸化作用を持つ野菜や果物、特にトマト(リコピン含有)や緑黄色野菜が推奨されます。これらの食材は細胞の酸化を防ぎ、癌の発症リスクを低下させる可能性があります。
- 大豆製品:イソフラボンを含む大豆製品はホルモンバランスに良い影響を与えることが示唆されており、前立腺癌の予防に役立つと考えられています。
2. 適度な運動
- 定期的な運動は体重管理に役立つだけでなく、体内のホルモンバランスや免疫機能を整え、癌のリスクを低減する効果が期待されます。特に有酸素運動が推奨されますが、無理のない範囲で継続することが重要です。
3. 体重管理
- 肥満は前立腺癌のリスクを高めるとされており、適切な体重を維持することでリスク低減が期待できます。体重が増えすぎないよう、食生活や運動習慣を見直すことが大切です。
4. アルコールと喫煙の制限
- 過度の飲酒は癌リスクを増加させるため、適量の摂取を心がけるか、可能であれば禁酒を目指すと良いでしょう。
- 喫煙は様々な癌のリスクを高めることが知られているため、前立腺癌のリスク軽減のためにも禁煙が推奨されます。
5. 定期的な健康診断
- 早期発見により予防や治療が容易になることから、50歳以上の男性やリスクが高いと考えられる場合には、前立腺特異抗原(PSA)検査を含む定期検診を受けることが勧められます。家族に前立腺癌の既往歴がある場合は、40〜45歳からの検診も検討するのが良いでしょう。
6. ストレス管理
- 慢性的なストレスはホルモンバランスに影響を与えるため、癌リスクに関連すると考えられています。趣味やリラクゼーション、適切な休息を取り入れて心身の健康を保つことが、予防の一助になります。
生活習慣の改善を心がけることで、前立腺癌のリスクをある程度下げることが可能です。
前立腺がんの早期発見には定期的な検査が必要
前立腺癌は初期段階では自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることが多い病気です。
また、健康に気を付けていても加齢に伴いリスクはどうしても上がってしまいますが、早期に発見できれば治癒する確率が高くなります。
早期発見のために何よりも重要なポイントは以下の2つです。
- 50歳を過ぎたら毎年PSA検査を受ける
- 排尿困難や頻尿、残尿感といったわずかな変化、初期の兆候を放置しない
PSA検査は採血検査のため、大きな苦痛を伴ったり恥ずかしい思いをすることは基本的にはありません。
まとめ
血尿や性的機能の低下、排尿時痛などが見られる状態では、前立腺癌が進行している可能性があるため、早期に検査を受けることが重要です。
特に症状が目立たない場合でも、定期的な健康診断やPSA検査を受けることで早期発見につなげることが可能です。自覚症状がなくても、体のサインに注意を払い、予防と早期発見を心がけましょう。
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